食パン・チキンバジル焼・グリーンサラダ・コーンスープ・牛乳・オレンジ
今日のランチはチキンのバジル焼き。
昔の卒業生は知らないかもしれないので説明すると、厨房が新しくなった時に入った蒸気オーブン。こいつで焼いたチキンに、バジルの風味がついている。
ガスオーブンと違って、カリッと焼きあがる感じはないが、無駄な油を落とし、なおかつ旨みが残るのが特徴だ。
鶏肉は俺の大好物。
これは子供のときから変わらない。
昭和四十二年頃、今は亡き祖父に、上野の精養軒に食事に連れて行ってもらったことがある。
俺は小学校一年生か、二年生だった。イイクボ君という友達も一緒だった。
当時は、上野の精養軒に食事に行く、というと、ちょっとした祝祭気分だったかな。
銀座の風月堂のフルーツパーラーとかね。そういう、ちょっとした贅沢をする習慣があった。
祖父に精養軒に連れて行ってもらったのは、後にも先にもそれが最初で最後だった。
祖父は機嫌がよく、「何でも好きなものを食べなさい」と言った。
すると、イイクボ君が間髪をいれず、「ぼくビフテキ!」と叫んだのだ。
そこで俺も負けじと、「ぼく鶏の足!」と叫んだ。
すると祖父は何度もなんども、「本当に鶏の足でいいのか。ビフテキでもいいんだぞ」と念を押したが、俺はそのたびに、「鶏の足」と答えた。
当時、ビフテキはご馳走の代名詞で、鶏の足はビフテキの三分の一ぐらいの値段だった。
思えば五十五歳になるまで、何羽の鶏を食べたんだろう。
数え切れないほどの鶏さんの命をいただいた訳だ。
その犠牲にふさわしい人生を送っているのかなと、俺は今日、真剣に思った。
(T.H)