ビーフストロガノフ・サフランライス・野菜サラダ・コンソメスープ・牛乳・オレンジゼリー
先週の木曜日は祝日でランチレポートはお休みだったが、実はおれは痛風の発作で寝ていた。
痛風は二十台後半からの宿痾(しゅくあ:持病)である。
痛風ほど不幸な病気なはい。
風が吹いても痛いと書くぐらいだから、その痛みは激烈を極める。
ところが、痛風ですというと誰もが笑う。決まって笑う。
「あはは、おいしいものばっかり食べてるから」とか
「暴飲暴食が過ぎましたな」とか。
生徒までも、「先生、痛風って、贅沢病でしょ?」
とくる。
「おれはそんなに贅沢してないし、おいしいものばっかり食べてるわけでもない!
先代の校長先生はおれより大食だったが、痛風ではないではないか!
痛風は実は遺伝病なのである!」
とむきになって叫んでいたら、
「先生、ランチレポート読んでる人は、みんな笑ってますよ。から揚げ二個食ったり、カレー六杯食った記録保持者とか、自分で書いてるじゃないですか」と言われた。
くそっ、証拠が残っていたか。
おれは黙るしかなかった。
今日のランチはビーフストロガノフ。
これは絶対、御代わりものだな、と心中で決意を新たにランチルームに行ったら、
「先生、当分、御代わり禁止ですよ。痛風でしょ」と調理員のお姉さんに機先を制された。
「はは、御代わりなんて、そんな年甲斐もない…」おれは精一杯の作り笑いを浮かべ、「ところで、ご飯が黄色いですね。カレー味ですか?」と話題を変える。
「違います。○○○○です。」と調理員さん。
「え?タクアン?」
「いやだ先生、タクアンじゃありません、サフランですよ!」
「あ、サフランね…」
調理員さんはけらけら笑っている。
「先生、朝の残りのタクアンがあるから、あげるよ」
調理員さんはこう言って、おれのビーフストロガノフの皿にタクアンを載せてくれた。
(T.H)